麻の実ピッツァ紹介 ~生地編~

7~8月と製造を縮小していた「麻の実ピッツァ」を近日再開予定です。

麻の建材を用いてDIYで作り上げた愛着しかない工房ですが、天井が低く、また、日中は灼熱の暑さが屋根を照りつけ、500℃超えのピザ釜まで作動すると40℃近くにも室温は上昇、、対策はあれこれしたものの、やむを得なく稼働縮小しておりました。いくら天然高機能なな麻建材といえども、限界はありました。

ということで、「食欲の秋」に向けて改めて取り組んでまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

◆麻の実ピッツァの特徴について

ここでは、改めて、麻の実ピッツァの生地について、紹介させていただきたいと思います。

ソースやトッピング食材については、別途紹介いたします。長い語らいになりますが、よろしければ、ご一読ください。


A.麻の実ピッツァ紹介・基本材料

1.小麦粉
2.塩
3.酵母
4.オリーブ油
5.麻の実

B.生地づくり

C.ピザ石窯&急速冷凍庫

D.麻燻製・麻の実ナッツ


A.麻の実ピッツァ紹介・基本材料

ピッツァ生地の基本材料は小麦粉・塩・水・酵母です。オリーブ油の使用有無はお店によりますが、当店では滑らかさを出すために使っています。

1.小麦粉

小麦粉は、北海道産の「キタオカオリ」と「スペルト小麦」をブレンドして用いています。

「キタノカオリ」は、粉色が黄色みがかった甘みの強い小麦粉です。パン用の希少なブランド小麦として有名で、麻の実ベーグル(現在休止中)でも長らく使ってきました。非常に人気のある品種ですが、栽培の苦労も多い品種のために作付けは減少している状況にあります。ピザ屋さんで、この粉を使っているのは見たことはなく、麻の実ピッツァ発足当初は別の北海道産ピザ用小麦を使っていました。

「スペルト小麦(ディンケル小麦ともいいます)」は、ご存じの方も多いでしょう。パン用小麦の原種にあたる古代品種です。ヨーロッパでは9000年以上も前に小麦栽培が行われていますが、そのルーツを継ぐ小麦です。麻の実(=大麻草の実)は、1万年以上も前から日本人が利用してきた古代植物であり、古代植物同士の相性は間違いないはず、と試したところ、やはり他にない美味さになりました。

スペルト小麦に魅せられて、国内でも栽培する農家が増えていますが、栽培効率が向上するよう改良された品種と比べて生産性(経済性)は悪く、希少小麦になってしまうことは当然なこと。農家の皆様に感謝して、利用しております。とにかく風味がよくて、麻の実とも前述のキタノカオリとも相性バッチリです。全粒粉で栄養価も残っているのも嬉しいポイントです。

いずれの小麦粉も北海道・十勝の製粉会社「ファーム十勝(株式会社山本忠信商店)」さんより仕入れさせていただいております。「キタノカオリ物語」は、同社と栽培農家の熱い想いに溢れています。ご関心ある方はご一読ください。
https://www.farm-tokachi.com/p/00001

2.塩

ピザづくりに大切な塩。塩が変わるだけで、がらっと味は変わるので不思議なものです。

当店では、「真珠塩」というブランド塩をメインに使っています。三重県伊勢市の南に位置する南伊勢町で作られています。南伊勢町は、伊勢志摩に残る豊かな森林の養分が豊富に流れ込むリアス式海岸を有した地域です。(なお、三重県での戦後初の麻栽培は、この南伊勢町から始まりました。)

その綺麗な海水を用いて、薪で終日かけて炊き上げる海水塩・釜炊き塩になります。じっくりと煮詰めることで真珠層からのカルシウムやミネラル分が溶け出し、深い味わいと豊かな風味、そして、苦味や甘味なども感じられます。

三重県・南伊勢町の美しい海。注水地の近くです。(阿曽浦大橋から眺める海:三重フォトギャラリー)」

「真珠塩」という名前なのは、伊勢志摩名産品「真珠」と一緒に炊き上げるから。真珠がもつカルシウムやミネラル分が溶け込み、より美味しいお塩になります。真珠の表層部分は「珍珠粉」として古くから漢方薬の材料にも使用され、美容に良いとされています。

近場のご縁で使い始めたのでしたが、いまやもう欠かせない存在です。

3.酵母

「白神こだま酵母」を用いています。世界遺産「白神産地(青森県)」のブナ原生林で発見されたパン用酵母になります。一年のうち半年以上も雪で覆われる厳しい寒さと過酷な環境の中で、自然界そのものの生態系が脈々と受け継がれた厳しい場所ゆえに誕生した類い稀なる豊かな力を有しています。

天然のトレハロースを含むために「ほんのりとした自然な甘さ」があり、芳醇な香りも漂います。さらに、生地の硬化を防ぐ効果がある上に、寒い地域の酵母ゆえの冷凍耐性がよく冷凍品にも安心です。

パン屋さんでの使用は珍しくないですが、ピザ屋さんではかなり少ないと思います。が、当店では、この酵母が一番相性よいようです。

「世界遺産・白神山地(青森県)の森 と 白神こだま酵母の特徴」

4.オリーブ油

伝統的なナポリピザではオリーブ油は使われないのですが、当店では、食感の向上(生地の柔らかさや、歯切れのよい生地食感にする等)のために用いています。『麻の実を生地に混ぜる』という大きな命題をもっている中、オリーブ油を入れた方が大勢の方に好まれると判断いたしました。

オリーブオイルには、スペイン産のオーガニック・エキストラバージン・オリーブ油【ヴィラブランカ】を使っています。老舗オリーブ油メーカーによる厳格な品質管理の下、溶剤は用いずに、遠心分離方式とコールドプレス製法で作られました(有機JAS認定品)。香りもよく、そのままサラダ等で食しても美味しいです。

5.麻の実

生地に混ぜ込む麻の実は、いわゆるプロテインパウダーです。国産のものとカナダ産を用いています。

国産100%としたいところですが「粒度の問題」があり、より微粒子状のカナダ産と合わせています。国産の麻の実は、油分を含む状態のものから粉砕していることもあり、カナダ産のように超微粒子粉砕ができないのです(ちょっとだけですが舌に残ってしまう..)。将来、日本での食用麻栽培が拡がり、国産の超微粒子パウダーを期待するところです。

なお、国産麻の実は「麻マヨネーズ(松田マヨネーズ)」で用いている麻の実オイルを絞った後のものを粉砕しております。日本で食用を目的とした麻栽培が認められているのは現在2軒のみ。その流通量も微々たるものです。希少な麻の実を譲っていただき、使わせていただいております。

「超限定生産の麻マヨネーズ(松田のマヨネーズ)

*麻の実独自の香りと旨味「麻の実メイラード反応」

麻の実パウダーの凄さは、その豊富な「たんぱく質」量にあります。その含有量は50%。つまり、100gのパウダーがあれば50gはたんぱく質になります。

「たんぱく質」と「糖分」を高温で熱することで生まれる独自の香りを「メイラード反応」といいます。”麻の実の豊富なタンパク質”×”500℃の高熱”で生まれる香りは、他にない美味しさを引き出します。ぜひお試しください。

...ピッツァ生地の材料は以上です。また、保存料・添加物は未使用です。

 

B.生地づくり

続いて、ピザ生地の作り方についてです。

当社では、パワフルで高速な業務用スパイラルミキサーでなく、業務用ニーダーを使っています。ピザでは珍しいと思います。前者と比べると、こね上げるまでの時間は10倍以上かかっていると思います(捏ねて~生地を休めて、を2回繰り返すため)。

この捏ね方の一番の良さは、小麦粉の粒子に水が馴染みやすい点にあります(水和といいます。ここが甘いと生地が直ぐ固くなります)。手こねに近い感覚かもしれません。ゆっくり、弱い力で均一に力をかけていくことで、とてもきめ細かい優しい生地が仕上がります。

こね上げた生地は、35℃の環境で1時間ほど発酵させます。その後、分割して丸め、3時間ほど冷蔵庫で寝かせることで出来上がります。もっと長時間にわたって生地を寝かせるのが一般的ともいえますが、当社で用いる国産小麦でやると、まるで『パン』のような食感になってしまい、ピザらしい歯切れのよさがなくなってしまうのです。

(パンを焼くときは、じっくり長期熟成させます。2日以上熟成させると、小麦(そして麻の実の)香りと旨味が重厚になったパンになります。機会ありましたら違いをお試しください。)

「麻の実ピッツァ生地。麻の実含有により緑がかった色合いになります。」

C.ピザ石窯&急速冷凍庫

そうして仕上げたピッツァ生地は、『美味しくなあれ』との想いを込めて、1枚ずつ丁寧に伸ばし、トッピングします。

ピザ釜は電気式ですが、10cm以上にもなる石窯でできており、その蓄熱性は抜群です。その分厚い石窯から放出される遠赤外線の熱は、食材を芯から一気に熱入れし、食材の旨味を引き出します。ピザ釜に投入して焼き上がるまでは、ほんの1分30秒ほどです。

薪で焼き上げるピッツァも香ばしくて美味しいですが、ピザ生地のポイントは熱の質と温度です。ピザ本来の美味しさを純粋に味わうには電気式の方がよいと考えています。(ちなみに、薪の香りを少し補うのが、トッピングとしてお付けする燻製麻ナッツ ※後述 と考えています。)

焼き上げたピッツァは、そのままマイナス35℃の特殊冷凍庫(ショックフリーザー&ブラストチラーといいます)に投入します。ピザにとっては、500℃以上の環境から、一気にマイナス35℃に移ります。凍結するまでに必要な時間は、およそ20分ほどと短期間です。

急速に冷凍することで、食材の旨味を閉じ込めることができる上に、ピッツァに含まれる水分の蒸発を防ぎます。水分が失われると、解凍して食べたときにパサついて不味くなります。

「手前の赤い筐体がピザ石窯です。奥の下段が急速冷凍機(上段は菓子用オーブン)です。焼き上げたピザは、そのまま冷凍庫に移動させます。

自然解凍して、オーブントースターで4~5分焼くことで、できたてに限りなく近い状態でお召し上がりいただけるのは、こうした急速冷凍技術の恩恵です。

D.麻燻製・麻ナッツ

麻の実ピッツァでは、栄養価溢れる「麻の実ナッツ」を焼き上げたピザのトッピングとして付けてきました。今月からは全てのピッツァにおいて「麻燻製・麻ナッツ」に変更いたします。(今までは、一部のメニューに限定しておりました。)

*麻燻製とは?

麻燻製とは、その名のとおり麻で燻製したもの。具体的には、国産のオガラ(麻茎)チップと麻炭を熱源に燻製しています。茎から繊維を剥いだ後に残る木質部と、その木質部を炭化したものです。活用されずに廃棄されがちになる細々としたものを燃やします。

40℃程度の低温で短時間の燻製(冷燻)なので、麻の実ナッツの豊富な栄養素は失われません。ほんのりとした香ばしさと麻の実ナッツの純朴な美味しさが焼き上げたピッツァにマッチします。

「おがらチップと麻炭(後述のピート入り)」

[注]おがらと麻炭を燃やしても、それなりの良い香りはするのですが、実はちょっと物足りません。短期間では香りがつかない、という意味です。ただ、長く燻製すると栄養素が失われてしまいます。
 そこで、スコットランド産の希少ピートを少し混ぜて燻製しています。燻製材の中でも唯一「スモーキーフレーバー」という呼称があるくらいの香りです。(ちなみに、スコッチウィスキーのモルトを燻すのもピート材です。ピートはウィスキーの命とも言われます。) 麻の実ナッツとの相性も抜群です。

ぜひ「麻燻製・麻ナッツ」単体でもご賞味ください。


★お召し上がりいただいたお客様のコメント

以下ページにまとまっています。飲食店で直接提供している訳ではないだけに、お寄せいただけるお声は本当に励みになります。ありがとうございます。

◎麻の実ピッツァ
・お召し上がりいただいたお客様の声:
https://asafuku.jp/SHOP/rating_list.html?SORT_ITEM=F0001-1&YGI=
・商品ページ:
https://asafuku.jp/SHOP/F0001-1.html


麻の実ピッツァ紹介 ~ソース編~」公開しました。

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